こんにちは、eURO2023です!
今日は多くの子ども、親御さんが悩まれている「夜尿症(おねしょ)」についてのまとめです。
「小学生になってもおねしょが治らない」「親の育て方が悪いの?」と一人で抱え込んでいませんか?
一つ確かなのは、夜尿症は「こどものせいでも大人のせいでも無い」ということです。
夜尿症はとても一般的で、しかしとても複雑な病態です。
夜尿症の原因を解き明かそうと、現在でも数多くの研究が進んでいます。
今回は、2025年までに発表された最新の医学論文などのデータに基づき、夜尿症の「今わかってきた原因」と、治療を開始する前にご家庭でできる「生活習慣の改善」について、わかりやすく解説します。
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夜尿症はどれくらい多いの?(最新の疫学データ)

まず、夜尿症は決して珍しくありません。
世界的な傾向:実は増えている?
2025年に発表された世界規模の調査(メタ解析)によると、小児〜思春期における夜尿症の有病率は全体で約7.2%と報告されています(過去から現在までを通した有病率)。
しかし、注目すべきはその変化です。 2000年から2009年までは6%、2010年から2019年は7%であった有病率は、2019年以降の研究では約11%へと増加傾向にあると報告されています [1]。
この背景には、診断基準が整ってきたことに加え(みんなが注目して診断するようになり、そのため「夜尿症」と報告された数自体が増えた)、COVID-19パンデミックによる心理的なストレスが、お子さんの神経発達などに影響を与えた可能性も指摘されています [1]。
夜尿症になりやすい「リスク因子」
最新の統計解析により、夜尿症に関連する要因もわかってきました[1]。
- 尿路感染症(UTI)の既往: 過去に尿路感染症にかかったことがある子どもは、そうでない子に比べてリスクが高いことがわかっています(約3.9倍)。
- 遺伝と性別: お父さんやお母さんに夜尿症の経験がある場合や、性別が男の子の場合は、その子も夜尿症に少しなりやすい傾向があります。
- 心理的ストレス: 強いストレスや喪失体験が引き金になることがあります。
ただし、上記が明らかである場合はむしろ少なく、原因が特に見当たらない夜尿症が実は大半です。
なぜ「おねしょ」をしてしまうの?(体の仕組み)

夜尿症は、現在医学的に3つの原因が重なって起こると考えられています [2]。
夜間多尿(寝ている間におしっこがたくさん作られる)
通常、寝ている間は「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」というホルモンが脳から出て、おしっこを濃縮し、量を減らしてくれます。 しかし、夜尿症のお子さんでは、このホルモンの分泌リズムがうまくいかず、寝ている間も昼間と同じようにおしっこがたくさん作られてしまうことがあります [3]。
また、いびきや睡眠時無呼吸がある子どもは、心臓への負担から別のホルモン(ANPやBNPなど)が出てしまい、利尿(おしっこを出す作用)が促進されてしまうこともわかっています [4]。
膀胱機能障害(膀胱が小さい・過敏)
膀胱におしっこを溜める力が未熟なケースです。
特に「排尿筋過活動」といって、膀胱におしっこが十分に溜まる前に、膀胱が勝手に収縮してしまう状態が、夜尿症の子どもの約半数(55.7%)に見られます [5]。
(正確には、溜めておけるおしっこの量が少ない子どもが約半数、ということです。しかし本当に膀胱が小さいのではなく、膀胱が過敏に反応してしまう過活動がその要因の一つであると考えられています)
また2025年の報告では、ビタミンDやビタミンB12の不足によって、膀胱の感覚がより過敏になり、この過活動を助長している可能性が指摘されました [6]。
覚醒障害(尿意で目が覚めない)
夜尿症の子どもは「深い眠りにつき過ぎているため、起きられない」と思われがちですが、多くの脳波研究(PSG:ポリソムノグラフィ)では、夜尿症の子どもとそうでない子どもの間で、各睡眠ステージの割合などに明確な差は見られないことが示されています[2]。
一方、夜尿症の子どもはそうでない子どもに比べて睡眠中の身体の動き(覚醒のサイン)が多いことが報告されています[7]。
また、最新の研究(2025年)では、夜尿症の子どもにおいて微小覚醒(microarousals)の頻度が高いことが確認されており、これが睡眠の連続性を損なっていると報告されました[8]。
「膀胱機能障害」とも関連しますが、夜尿症の子どもは「ぐっすり眠りすぎている」のではなく、膀胱からの刺激などによって睡眠が絶えず妨害されており、その結果として「目覚めにくく、かつ細切れな眠り」になっている、のかもしれません。
家で気をつけて見ておいて欲しいこと
「病院に行くと、痛い検査をされるんじゃ…」と不安に思う子どももいるかもしれません。安心してください。夜尿症の診断において、いきなり痛みを伴う検査をすることはまずありません。
「夜尿症診療ガイドライン2021」でも、まずは「お話を聞くこと(問診)」と基本的な診察が重要とされています。
また、以下のポイントをお家でチェックすることは、夜尿症の診断や治療に向けて大事となってきます。
医師が一番知りたい「4つのチェックポイント」

診察室では、おねしょそのもののこと以外に、以下のことを詳しく伺います。「そういえば…」と当てはまるものはありませんか?
- 1. 「隠れ便秘」はありませんか?
- 実は、便秘はおねしょの最大の敵と言われています。直腸に便が溜まると、すぐ隣にある膀胱を圧迫してしまい、おしっこが溜めにくくなってしまいます。
- 「毎日出ているから大丈夫」と思っていても、コロコロした硬い便(ウサギの糞のような便)や、極端に太い便が出ていませんか?また、下着に少し便がついていることはありませんか?これらは便秘のサインです。
- 2. 昼間のおしっこに異常はありませんか?
- 学校から帰ってきた時、パンツが少し濡れている(ちょい漏れ)ことはありませんか?
- 「おしっこに行きたい!」と言ってからトイレに駆け込むまでの時間が短くないですか?(尿意切迫感)
- 股を押さえたり、足をクロスさせてモジモジする「我慢のポーズ」をとっていませんか?
- 3. 睡眠中の様子はどうですか?
- 大きないびきをかいたり、息が止まっているようなことはありませんか?(睡眠時無呼吸は、ホルモンバランスを崩し、夜間のおしっこを増やします)
- 4. 飲み物の種類とタイミング
- 夕食後や寝る前に、カフェインを含むもの(緑茶、紅茶、コーヒー、コーラなど)を飲んだり、柑橘類など(カリウム、果糖が利尿作用を持つ。水分も多い)を摂取したりしていませんか?これらは利尿作用があったり、膀胱を刺激したりします。
病院で最初に行うステップ
上記のチェックポイントを踏まえ、病院では以下の手順で進めます。
- 身体診察: お腹を触って便が溜まっていないか(お腹の張り)や、背骨・お尻に神経の異常を示すサインがないかを確認します。下着を下ろして少し見るだけですので、痛くありません。
- 尿検査: コップにおしっこをとってもらいます。尿の濃さ(きちんと濃縮できているか)や、バイ菌が入っていないか、糖尿病などの隠れた病気がないかをチェックします。
- 排尿日誌(膀胱日記): これが診断の「命」とも言える最も重要なツールです。 お家で数日間(週末などでOK、だいたい2日間)、「何時におしっこをしたか」「量はどれくらいか(計量カップで測ります)」を記録してもらいます。
他に、超音波検査(痛みを伴わない、安全な検査です)や、残尿がないか・おしっこの勢いはどうかを見る検査、などを追加で行うことがあります。
上記の検査を行い、どうしても追加で必要な検査があれば、その都度相談をしていきます。
今日からできる!お家での生活習慣見直し
お薬による治療を始める前、あるいは同時並行で、生活習慣の見直しを行います。これだけで改善するお子さんも少なくありません。最新の推奨事項をまとめました。

水分のとり方「午前はしっかり、夕方は控えめに」
1日の水分摂取量のうち、80%程度[9]は夕方までに済ませましょう。
- 夕食後の水分はコップ1杯程度に抑えます。
- お風呂上がりや寝る直前のガブ飲みは要注意です。
食事の注意点
様々な食事・水分摂取の注意点があります。これらは「摂取を控える→夜尿が減る」という直接的な治療効果を示した報告は少ないものの、夜尿を治す上で土台となりうる生活習慣となります。一度見直してみましょう。
- 塩分を控える: しょっぱいものを食べると喉が渇き、水分をとりすぎてしまいます。大人での報告ですが、塩分制限によって夜間の多尿が改善するとの報告があります[10]。
- 糖分を控える:糖分については、子どもの過活動膀胱による症状については、2025年のCuiらの研究で関係性が示唆されました[11]。また、2020年のHuangらの研究により、夜尿症と糖分摂取の関連性が示唆されました[12]。
- カフェインを控える:当たり前かもしれませんが、夕方以降はカフェインの摂取を控えましょう。Rezakhanihaらは、534人の夜尿症をもつ子どもをカフェイン制限する群(30mg未満/日のカフェイン摂取)、もしくは制限しない群(80-110mg/日)に分けて、1ヶ月後の夜尿回数について調べました。もともと3.5回/日程度の夜尿だったのが、介入1か月後はそれぞれ週あたり2.3回と3.2回と、カフェインを制限した群で有意に夜尿回数が減少しました(p=0.001)[13]。
- 炭酸飲料・カルシウムを控える: 夕方以降は炭酸飲料、牛乳などの乳製品はできれば避けた方がよいかもしれません。これらは膀胱を刺激したり、利尿作用があったりします[2]。ただ炭酸飲料については、避ける方が良いとは言われていますが、エビデンスはまだ無いようです[14]。
寝る直前に排尿する
- 就寝直前の完全排尿: 明確なエビデンスがあるとは言えませんが、基本的な排尿習慣として、寝る直前に必ずトイレに行きましょう。眠る時に膀胱に尿が溜まった状態だと、膀胱が満杯になるまでの時間が相対的に短くなってしまいます。
便秘の解消
実は、便秘はおねしょの大敵と言われています。腸の中に便が溜まっていると、すぐ隣にある膀胱を圧迫してしまい、膀胱におしっこを溜めにくくなると考えられているからです。
Hsiaoらは、台湾の大規模データベースを用いて夜尿症の子ども1143名と、そうでない対照の子ども1143名を、年齢と性別をマッチさせて解析しました。結果、便秘ありは夜尿のオッズが高い(OR 1.79)、つまり便秘があると夜尿もある可能性が高い、ということがわかりました[15]。
一方、便秘治療が夜尿の改善に繋がった、という報告はまだ乏しいのが現状です。
Hodgesらは夜尿症の子ども30名に対しレントゲンを評価し、直腸が拡張している(明らかな便秘の症状があるかどうかは不明)場合に下剤による治療を行いました。結果、多くの子どもで下剤治療によって「夜尿が治癒した」と報告しています[16]。しかし、この報告は便秘の定義が曖昧で、結果の解釈には十分注意が必要です。
Borgströmらは、初めて夜尿で受診した66名の6–10歳の子どもを対象に、便秘をRome IV分類(広く用いられている便秘の評価方法)または超音波で判定しました。便秘の子どもには2週間の便秘治療を行い、夜尿が改善したか評価しました。結果は明らかな夜尿の改善を認めなかった、とのことでした[17]。
以上から、まだまだ便秘の治療が夜尿の改善に直接繋がるという強い証拠はありませんが、特に夜尿以外のおしっこの症状をもつ子ども(昼間の尿失禁など)についてはより高い効果が期待できると言われています。依然として、便秘は放っておかずに治療をするのが良いと考えられます。
おわりに
夜尿症は、お子さんの成長とともに自然に良くなることも多いですが、生活の質(QOL)や自尊心に影響を与えることもわかっています。
「いつか治る」と放置せず、まずは上記のような生活習慣の見直しから始めてみてください。それでも改善しない場合は、是非お近くの泌尿器科や小児科で相談してみてください!
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参考にした論文・HP
- Adisu MA et al. Global prevalence of nocturnal enuresis and associated factors among children and adolescents: a systematic review and meta-analysis. Child Adolesc Psychiatry Ment Health. 2025 Mar 20;19(1):23.
- Nevéus T et al. Pathogenesis of enuresis: Towards a new understanding. Int J Urol. 2017 Mar;24(3):174-182.
- Aikawa T et al. The arginine-vasopressin secretion profile of children with primary nocturnal enuresis. Eur Urol. 1998:33 Suppl 3:41-4.
- Waleed FE et al. Impact of sleep-disordered breathing and its treatment on children with primary nocturnal enuresis. Swiss Med Wkly. 2011 Jul 1:141:w13216.
- Kim JM et al. Evaluation of nocturnal bladder capacity and nocturnal urine volume in nocturnal enuresis. J Pediatr Urol. 2014 Jun;10(3):559-63.
- Agar BE et al. A Novel Approach to the Management of Children with Primary Nocturnal Enuresis. Children (Basel). 2025 Aug 27;12(9):1128.
- Dhondt K et al. Abnormal sleep architecture and refractory nocturnal enuresis. J Urol. 2009; 182: 1961–6.
- Soster L et al. Sleep Parameters and Quality of Life in Children with Monosymptomatic Nocturnal Enuresis: Association, Prediction and Moderation Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2025 May 13;22(5):765.
- Jalkut MW et al. Enuresis. Pediatr Clin North Am. 2001 Dec;48(6):1461-88.
- Monaghan TF et al. Sodium restriction improves nocturia in patients at a cardiology clinic. J Clin Hypertens (Greenwich). 2020 Apr;22(4):633-638.
- Cui X et al. Correlation between excessive sugar intake and overactive bladder in children. Front Pediatr. 2025 May 8;13:1581852.
- Huang HM et al. Prevalence and risk factors of nocturnal enuresis among children ages 5–12 years in Xi’an, China: a cross-sectional study. BMC Pediatr. 2020 Jun 22;20(1):305.
- Rezakhaniha S et al. Limited caffeine consumption as first-line treatment in managing primary monosymptomatic enuresis in children: how effective is it? A randomised clinical trial. BMJ Paediatr Open. 2023 Apr;7(1):e001899.
- Ong LM et al. Approach to nocturnal enuresis in children. Singapore Med J. 2024 Apr 23;65(4):242–248.
- Hsiao YC, et al. Association between constipation and childhood nocturnal enuresis in Taiwan: a population-based matched case-control study. BMC Pediatr. 2020 Jan 28;20(1):35.
- Hodges SJ et al. Occult megarectum–a commonly unrecognized cause of enuresis. Urology. 2012 Feb;79(2):421-4.
- Borgström M et al. Fecal disimpaction in children with enuresis and constipation does not make them dry at night. J Pediatr Urol. 2022 Aug;18(4):446.e1-446.e7.
・夜尿症診療ガイドライン(2021)(夜尿症を診察する上では欠かせないガイドラインです)
(※論文検索には夜尿症診療ガイドライン、ChatGPT (5.2)、NotebookLMを用いました。正確な引用元を確認しています。)


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